「夏の思い出」~合宿編~ 流星雨

会社の夏休みも今日で終わり、明日から仕事である。
例年の如くだが「墓参り」と「必要な物の買い物」意外はだらだら過ごしてしまった。

さて、私の住む街では市の青少年育成事業の一環として、群馬県水上と長野県黒姫高原にそれぞれ山荘を持っている。水上にある山荘は市内中学校の2年生が「林間学校」として必ず行く事になっている。黒姫高原の山荘は主に市内にある高校の部活動の合宿として利用されている。もちろん一般もスキーや観光に利用できるが、少なくともグループ代表が市民か市内在住か市内在勤、市内就学が条件である。

高校時代、夏休みは必ず部活の合宿で黒姫高原に出かけた。
普通夏季合宿、と言うと陸上部とか、サッカー部とか運動部系を想像されると思うが、私のブログをずっと読んで頂いている方はご存知のように私は中高通じて「演劇部」であった。
では、「演劇部」がわざわざ黒姫高原まで行って何をやるのか?と言うと先ず、「空気の良い爽やかな気候の下で思いっきり声を出す」「学年の枠を超えた交流と親睦」「他県での文化や伝統芸能に触れる」まあこんなところが大義名分。

実際には練習は殆ど午前中の涼しい時間にやって、午後は黒姫高原を散策したり、山荘の近所に或るテニスコートでテニスをしたり、一緒に来てる陸上部や他の部の連中とソフトボールをしたり、夕方又ちょっと練習してから、今度は山荘内でピンポンやバドミントンをしたりと、何か遊んでばかりだった。

「演劇部」は男子の正部員が私一人だったので合宿にはよく演劇部の公演でスタッフとして手伝ってくれる私の友人たちを同行させて、夜になると女子達や後輩達を私たちの部屋へ集めてうだうだ話をしていた。「将来のこと」「友達のこと」「恋愛のこと」などを話しているうちに就寝時間などとうに過ぎて、眠い奴は自室に帰っていくのだが、実は此処からが盛り上がる。
先生たちにばれぬよう声を潜め、部屋を暗くして話し出すのは「怪談話」こう言うのが上手い奴が必ず女子にひとりやふたりいるから結構盛り上がったね。

3年の夏には部員みんなで黒姫高原のすぐ近くにある「野尻湖」と言う湖に行った。
キラキラと光る湖面、時折吹き過ぎる涼しい風、正面に黒姫山、「風光明媚」と言う言葉がピッタリだった。
みんなでボートに乗ろう、などと言う事になって、人生で初めて「手漕ぎボート」に乗った。
私の友人と後輩の女子と私と3人で一つのボートに乗る事になったのだが、何せ誰も漕いだ事が無い。とりあえず友人が漕ぐ事になったのだが、漕いでも漕いでも進まないどころか同じところをぐるぐる廻っているだけ、しかもオールを動かすたびに水がボートの中に入ってきて3人ともずぶ濡れになる始末・・・見かねた先生が私たちのボートに近づき漕ぎ方を教えてくれたっけ。
何とか漕げるようになって、湖の小島を廻る。時折観光船やモーターボートが私たちのボートの近くを通る度に、波が寄せてボートを木の葉のように揺らした。
一時間ほどして岸に上がると、湖畔では「水着美女」の撮影会が催されていてカメラ小僧やカメラおじさんがモデルさんに群がっていた。その方に目をやろうとすると女子達の冷たい視線・・・観光船乗り場では「野尻湖ブルース」なる歌が拡声器から流れていて、思わず笑ってしまった。が、実はこの湖、「ナウマン象」の化石が発掘された事で有名な湖であった。

次の日には「妙高高原」を越えて(もちろん電車で、ですよ)直江津へ行く。
初めて見る日本海は演歌で良く聴く「荒れて寂しい日本海・・・」等ではなく、穏やかで静かな海だった。高い堤防の下にあるテトラポット沿いに歩いて行くと石油か何かのコンビナートが見えた。太平洋の蒼さとは違った少し暗みのあるその海の向うに中国大陸、遥かな異国を思う。
堤防を上がると「日本海名物」蟹のお店が一杯出ていた。

山荘に帰ると、最終日の夜はキャンプファイヤー、みんなで呑んで(あっもち、ジュースだよ)唄って(わが部はアリスファンが多かっったのでアリスメドレー、それから様々なフォークメドレーね)で盛り上がったり、後輩達と花火をやったり、山の上の方を見上げると東京では絶対見えないほどの満点の星、星・・・
最後はお約束の線香花火・・・一番最後の火だまが落ちてジュッ・・・何だか自然に涙がこぼれた。
と、何処かでシューッと言う音、誰かが残りのロケット花火に火を点けた。

あたかも山の頂上を掠めるように、流星がひとつ、ふたつ、流れて消えた。


     ~湖畔のスナップ~

   蒼い水面に流れるそよ風
   ふたりのボートに眩しい陽射し
   
   何処まで行こうか あなたは笑って
   オールを漕ぐたび 飛沫が冷たい

     日に焼けたあなたのその胸にすがり
     泣き真似た午後の湖畔のひととき

   そしていつしか 季節は変わって
   あなたは都会へ 帰って行った

   小島を廻って 光揺れる波
   観光船に白い航跡

   陸にあがって少し居眠り
   山の麓にロッヂが見える
     
     想い出の中で笑い声が弾み
     汗が光った午後の湖畔のひととき

   そしていつしか 夕陽を追い駆け
   あなたは都会の街に消えた

社会人になって、この時の合宿の思い出を詩に書きたくて、一つの物語を描いた。
物語はフィクションだが、こんな想い出の或る方は多いのではないか、と思う。
なお、湖畔は「みずべ」、陸は「おか」と読んでいただければ幸いである。
   

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