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zoom RSS 無縁坂

<<   作成日時 : 2006/06/07 00:08   >>

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今から30数年前、日本テレビ系列で放送されたドラマ「ひまわりの詩」
主演は池内淳子さん、三浦友和さん
母と子と、二人を取り巻く人々のさりげない日常の中での出来事を描いたホームドラマ
昔はこんな雰囲気のドラマが多かった。
まだまだお隣さんや御近所や街中の人々が、不器用だけれどそれなりに触れ合っていた時代、まだまだ事件ものサスペンスドラマなんて無かった時代。

私の母はそんなホームドラマの大ファンだった。
母は池内淳子さんや八千草薫さんのような「優しい日本の母」とは程遠く、どちらかと言えば京塚昌子さんのような「肝っ玉母さん」タイプ、或いは「渡鬼」の赤木春江さん演じる「幸楽のお母さん」のような何でも自分で仕切るタイプではあったけれど。

大正11年、それ程裕福でもない家に生まれた母は太平洋戦争の真っ最中に父と結婚をし、戦後の一番大変な時期に4人の子供を育てた。
その頃の、敗戦直後の日本を考える時、良くぞあんな混沌とした時代に子供を生み、育てたものだ、と思うし、仮にそんな時代に自分が置かれたら、自分の身を守る事だって出来たかどうか・・・それを考えただけでも、両親に対して畏敬と尊敬の念を抱いてしまう。

私が中三の時、初めて買ってきた、当時ファンになったばかりのグレープの6枚目のシングル「無縁坂」を兄のステレオを借りて聞いていたとき不意に母が「これ、ドラマの唄だよね」と聞いてきた。「そうだよ、グレープって言うふたり組みが歌ってるんだ」と言ってレコードジャケットを見せた。「ふ〜ん、優しそうなお兄さん達だね」と言って「いい歌を歌うね〜」としみじみと言った。
それからはテレビでグレープやさださんを見るたびに「ほら、さだまさしがでてるよ」と言った。

今日6月7日はそんな母の9回目の命日である。
風邪を引いたくらいでは行かなかった大の医者嫌いの母が、最後は2ヶ月の闘病生活を近所の総合病院で送った。思えば前年の秋に、子供達の中では母と一番仲の良かった長姉が逝ってしまった時にかなり精神的なダメージを負っていたのだろう。
母が入院してから、毎日仕事帰りには病院へ行った。いい日と悪い日を繰り返しながらだんだんと衰弱して行くのがわかった。

6月2日にさださんのコンサートがあった。奇しくもその日だけは母も小康状態で、意識もあった。父や兄弟達も「今日は大丈夫そうだし、お前も今日だけは少し息抜きをして来い」と言って貰い、後ろ髪を引かれながらもコンサートに行かせて貰った。さださんの唄は一々心に沁みて、溢れる涙を隣の席の友人に見られないかとひやひやした。
亡くなる前日、いつもどおり仕事帰りに病院へ行くと母は「毎日来なくてもいいから、早く帰って休め」と私に言った。私は「何を病人が余計な心配してるの!!」と言った。それが母と交わした最後の言葉となった。

母に対してせめてものはなむけだった、と今にして思うのは美空ひばりさんや小林幸子さんなどのコンサートを父と一緒に行かせてあげられた事位だ。
小林幸子さんが地元のホールでコンサートをした時のこと、そのチケットも両親の為にとって行って貰った。その時、小林さんは例の大道具のような衣装で「さだまさしのお兄ちゃんに書いてもらった曲です」と言って「約束」を唄った。それを聴いてきた、良い歌だった。と嬉しそうに話す母を見て「行って貰って良かった」と思った。

「無縁坂」は不忍池の畔にしんと静かに流れています。
と言うさださんの言葉だけを頼りに何度か近くまで行って辿り着けなかった「無縁坂」
2年ほど前、ネットラジオを通じて知り合いになった「さだまさしさんのファン」の方たちと「都内下町さだまさしゆかりの名所ツアー」でやっと辿り着く事ができた。

そこにはあの30数年前のレコードジャケットと同じ風景があった。
ふと、緩やかな上り坂を見上げると見覚えの和服を着た年老いた女性の、少し腰を曲げて昇っていく背中が見えた・・・気がした。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
忍ぶ、不忍(しのばず)、無縁坂
♪母がまだ若い頃 僕の手をひいて この坂をのぼるたび…♪ ...続きを見る
まこっちゃんの好奇心倶楽部
2006/06/07 15:59

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。こんにちは。
羽柴様のブログをいつも拝読させていただいております。
今回の「無縁坂」の記事も読ませていただいて、とても胸があつくなりました。
TBを貼らせていただきました。
何卒、よろしくお願いいたします。
まこっちゃん
2006/06/07 16:03
まこっちゃんさん、いらっしゃいませ
トラックバック有り難うございます
又コメントまで頂き、重ねて有り難うございます。丁度母の命日と言う事で少し思い出話を書いてみました。
又おいでくださいね。こちらこそ宜しくお願い致します。
羽柴小一郎
2006/06/07 19:10

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